第115回研究例会開催について(お知らせ)

各位

 

比較文明学会第115回研究例会を以下の要領で開催します。  

多くの皆様のご参加をお待ちしています。 

 

*******比較文明学会第115回研究例会*******

 

日時:2022年8月20日(土)14:00〜16:00

開催形式:Zoomを使ったリモート会議形式での開催

講演者:森園奈央(東海大学 観光学部・教養学部国際学科兼任講師)

演題:民族観光を通じた「異文化交流」のこれからを考える

 

講演要旨:

 国際観光客到着数は、2019年には14億6000万人を超えていたが、新型コロナウィルスのパンデミックによって、2020年には前年から74%減少し、3億9400万人となった。しかし、コロナ禍中においても、インターネットを通じて現地とリアルタイムに交流するオンライン観光などを通じて異文化に触れることへの欲求は増幅され、観光が再開されることが渇望されていた。パンデミックが終息の気配を見せつつある最近の観光客数は、漸く緩やかな上昇を見せるようになり、国連世界観光機関は、2022年以降、国際観光客数は大きく増加し、2024年にはコロナ禍以前のレベルに回復するであろうと予測している。

 多様な観光形態のひとつに民族観光がある。主として先進地域の観光客が、伝統的な生活を営む民族を訪ねる観光形態である。これまで民族観光は、観光客を受け入れる民族(ホスト)の収入源となり、その経済的改善を進めたことや、伝統文化の消失を防いできたことなど、一定の成果を挙げてきたと言われる。だが、その一方で、ホストの人々が、増加する観光客や観光事業者の要求に迎合せざるを得ず、生態系や生活スタイルが破壊され、伝統文化が「見世物」として歪曲されるなど、自然・文化・社会など様々な側面への悪影響も指摘されてきた。すなわち、民族観光は功罪相半ばしてきたわけであり、ホストに経済的基盤を与えながら、同時に彼らの社会・文化とアイデンティティを保護する方策が求められてきた。  このような状況の中で起こったのが、今回のパンデミックによる民族観光の途絶である。民族観光は早晩再開されるだろうが、その前に今後のあり方を再考する必要性がある。

 本発表では、まず従来の民族観光において引き起こされてきたとされる伝統文化の歪曲や、アイデンティティの喪失などの文化・社会的問題とその対応策を、東南アジア諸国の事例を踏まえながら整理する。また、個人旅行が増加したことや、持続可能な観光の概念の台頭など、観光の趨勢に伴う人々の志向や行動の変化を考察する。そのうえで、民族がもつ「時間」と「空間」に対する感覚を、民族観光を通じて観光客が体感することによって、異なった「世界観」の存在に気づくことを民族観光の新たな価値であると捉え、その意義と方法について検討したい。今後も国際観光客は増加すると予測され、個人で旅行をする人々も増える中で、観光客の行動を完全に制御することは難しい。民族観光の理念と方法を新たに確立し、その新しい価値を形成することが重要となろう。民族観光を通じて、他の民族の文化に触れ、交流を行うことによって、自分のそれとは異なる世界観を理解する機会を得ることは、文化的アイデンティティや世界の解釈が異なることによる争いが絶えない現代において、他民族や他文化を理解し、共生するための「草の根的な」一歩となると考えられる。これまで、伝統的=非西欧的な「民族」文化ばかりがその対象となり、「観光の南北問題」が問題視されていた民族観光に、新たな価値を付加することによって、全ての民族文化に適応できるような新たな形の民族観光の構築を考えたい。

 

申し込み先  

参加希望者は、下記アドレス宛にメールをお送りください。  

比較文明学会事務局  

hbm*tamacc.chuo-u.ac.jp (*は@に読み替えてください。) 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です