三浦伸夫(他)監訳『OXFORD 数学史』

ISBN 978-4-320-11088-5

判型 B5

ページ数 896ページ

発行年月 2014年05月

本体価格15,000円

こんな数学史の本は初めてだ!

  数学とは何であろうか。それは人間生活とどのような関わりを持つのだろうか。こういった疑問のもとに従来多くの数学史が著されてきた。そこではニュートンやフェルマなどの天才的数学者,そして彼らの著作や書き残されたノートなどが主役であった。また人間面から数学者を紹介する伝記であったり,数式や図形のオンパレードであったりした。しかし数学と呼ばれるものは著名な数学者のみならず,無名のあらゆる分野の人々と関係してきたことも事実である。しかもそれは世界中の至るところに,そして数学テクストに限らず建築物や製造物などおよそ人間に関わるさまざまな事物に現れている。

  本書は従来の数学史のテーマや方法論とはまったく趣を異にする新視点から描かれた数学史であり,数学文化史と言ってもよいものである。特徴としては,対象を全世界に広げて従来の数学史が視野に入れてこなかった事例を取りあげたこと,人類学や言語学などの関連領域の視点を広く取り入れた構成になっていること,数学そのもののみならず時代の思想潮流や教育制度といった社会的文化的背景が常に配慮されていること,などがあげられる。しかし何といっても本書の素晴らしい点は,必ずしも数学史家にとどまらず学者世界の外に身を置くような者を含めた各分野の最先端の研究者が,独自の事例を用いて生き生きと話題を記述していることである。その多様な実例を通じて,人間は数学とどのように関わりながらさまざまな文化を築きあげてきたのかを知ることができる。網羅的ではないので数学の通史を期待することはできないが,どこでも関心のあるところから読み始めていただき,知的好奇心を刺激する面白さと新たな問題提起に満ちた本書をじっくりと味わってほしい。

 (共立出版HPより転載)

[原著 Eleanor Robson, Jacqueline Stedall eds: The Oxford Handbook of THE HISTORY OF MATHEMATICS, Oxford University Press, 2009]

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