「北部九州装飾古墳と東アジアの天文学」平井正則・古屋 栄

この講演は福教大紀要「王塚古墳天井画の数値的同定」平井(2003)とそれに続く、同紀要「北部九州装飾古墳と東アジアの天文学」平井・古屋(2005)の二論文に基づいている。

「王塚装飾古墳天井画が高句麗の真坡里4号墳天井画と相関する」根拠について物的根拠は乏しいが王塚古墳建造の六世紀、東アジアの文化のふたつの流れが特徴的なふたつの天文学と相関し、装飾古墳の装飾にそれらのふたつの文化の融合が示されると提案する。

長江文化に総称される多神教的な定住民族は、生産中心である農耕に重要な季節を重視し、暦作成に優れた天文学を生んだ。一方、黄河文化では狩猟を生活の基盤とする移動民族で、占領位置の測定、政治的プロパガンダのための「天人相関」説に代表される政治哲学のための天測(星図の作成)を得意とする天文学を創った。長江文化は中国東岸から有明海ルートへ、黄河文化は朝鮮半島を南下し、北部九州沿岸に達する玄海灘ルートを通り、ふたつの文化は北部九州背振山系を境に融合し、装飾古墳の装飾に現れたと考える。

福岡教育大学・平井正則 

2005.7.24

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