「沖ノ島から文明を考える」講演とシンポジウムの地方版記事
「海の正倉院」沖ノ島を世界遺産に 宗像市で講演会とシンポ
古代から「神の島」として崇拝され、「海の正倉院」とも呼ばれる宗像市・沖ノ島の世界遺産登録を目指す「沖ノ島から文明を考える」講演・シンポジウムが30日、同市深田のアクシス玄海で開かれた。講師となった吉村作治・早大客員教授は「世界遺産登録は行政に頼らず市民の手で」と、集まった約400人の聴衆に呼び掛けた。
沖ノ島は、古来宗像三女神の一神を祭る島。4世紀から9世紀にかけての多くの祭(さい)祀(し)遺跡が確認されている。今回のシンポは、大陸とのつながりの深い沖ノ島の文明交流、日本文化の形成などを考えようと比較文明学会が主催した。
吉村教授は「世界遺産から見た沖ノ島」と題し講演。これまでの日本の世界遺産登録について「行政主導で行われ、観光中心となって世界遺産となったことが裏目に出るケースもある」と指摘。「考古学の見地から沖ノ島は十分に世界遺産の価値がある。ぜひ宗像市民に立ち上がってほしい」と述べた。
この後行われたシンポジウムは、吉村教授のほか、川勝守・大正大教授ら専門家が、沖ノ島と世界文明との結び付きなどについて紹介した。2006/10/01付 西日本新聞朝刊
沖ノ島シンポ:世界遺産へ文明価値考察?宗像/福岡〔福岡都市圏版〕
玄界灘に浮かぶ宗像市の孤島・沖ノ島と周辺海域との文明を考察する講演とシンポジウム「沖ノ島から文明を考える」(比較文明学会主催)が30日、同市アクシス玄海であった。市内の民間団体を中心に沖ノ島を世界遺産に登録する運動が盛り上がっており、約500人が熱心に聴き入った。
はじめにエジプト研究の第一人者、吉村作治・早稲田大客員教授が基調講演。「今までの世界遺産登録は行政が音頭を取り、市民不在だった。だが、宗像市は市民の盛り上がりが見られる」とし「国宝・重文がこれだけ(約12万点)あり、世界遺産としての価値は十分にある」と強調した。
シンポには川勝守・大正大教授▽西谷正・伊都国歴史博物館長▽服部研二・香蘭女子短大教授ら7人が参加。西田館長は「韓国西岸の竹幕洞で沖ノ島に匹敵する祭祀(さいし)遺跡と遺物が見つかった。沖ノ島は古代の日本が韓国、中国の文明を受容するのに大きな役割を果たした」と重要性を説いた。
沖ノ島は周囲約4キロ。4世紀後半から10世紀初頭まで日本と大陸を結ぶ海上交通の要衝だった。祭祀遺跡から出土した金製指輪や三角縁神獣鏡など国宝だけで約8万点に上る。【中原剛】毎日新聞 2006年10月1日