2019年度 第2回環流文明研究会のご案内

今回は世界的に関心が深まっている「人新世」に関する興味深い発表2件です。皆様是非ご参加いただき、活発な議論を期待します。


(日 時)  7月13日(土)13:00~16:30

(場 所)  東海大学代々木校舎 4号館 4505教室 (5階)

(内 容)
(1) 小林雅博
「現代文明に共有される「人間不在」というヴィジョンについて」
現代文明は現在、自然環境、経済危機、AI問題などいずれも深刻な危機に追い込まれている。まず、自然環境の領域では、クルッツェン達が提唱した「人新世」という新しい地質学的時代概念において人類が持続的に生存することが非常に困難となる予測が科学的に示されている。「人新世」的現在を誘発したのは、人類が資本主義の経済活動によって自然環境破壊を招いたので「人新世」は「資本世」と呼ぶべきだという議論もある。本発表では、?このような「人新世」、?AIが人間知性を超えて労働・経済・生活などを激変させる「シンギュラリティ」(技術的特異点)、?「思弁的実在論」、「オブジェクト指向存在論」「加速主義」の諸実在論などが喚起する文明的問題を論じる。そこでは、「人新世」、「ポスト・シンギュラリティ」、「諸実在論」に共有される「人類の絶滅」と「人間不在の地球」というイメージが、「新たな終末のヴィジョン」なのではないか、という問題提起をする。

(2) 星野克美
「人新世学説と文明研究の課題」
 工業文明は、石油資源・金属資源の枯渇でその成立基盤を喪失し、2050~60年代に滅亡する可能性がある。(2015年比較文明学会研究発表済み) それに加えて、人為の影響で地球地質構造が激変する新たな地球地質時代に入ったとする「人新世(アントロポセン」学説が、P.Crutzen&E.Stoermerによって2000年に提唱された。これに呼応して、CO2排出量急増による生物絶滅・人類絶滅(「6度目の大絶滅」)を警告する「学際研究」が、世界の先端研究として、地球地質学、地球気候考古学、生物絶滅学、哲学、文化人類学などの分野で広がっている。今回の研究発表では、人新世/地球環境考古学/生物絶滅学などの学際研究の諸学説を精査して、生物絶滅・人類絶滅の仮説を検証し、併せて、そうした凄惨事態を来す工業文明の制度機構を解明し人類絶滅を回避する文明対応策などの文明研究の課題を問題提起する。(2019年10月比較文明学会大会個人研究発表予定)

(連絡先) 科学技術・生存システム研究所  神出瑞穂
Email: kamide-mizuho@max.hi-ho.ne.jp