小杉泰『イスラーム 文明と国家の形成』
小杉泰『イスラーム 文明と国家の形成(学術選書054 諸文明の起源4)』
四六並製・540頁・税込 2,100円
ISBN: 9784876988549
発行年月: 2011/12
■内容
イスラーム文明は、現代文明の重要な一翼を形成している。本書はイスラーム「文明」の奥行きと幅広さを、7〜10世紀の初期イスラーム文明圏の形成過程に焦点を当て、その根幹をなす特質をクローズアップしつつ総合的に論じたものである。日本を代表するイスラーム研究者の一人である著者の視野は広く、アラビア語原典史資料の探求と国際的な研究の最先端を統合して、ここには日本人による新しいイスラーム学が明確に示されているといる。
■目次
口 絵
目 次
はじめに
第1章……イスラーム圏の地理的・空間的拡大
1 アラビア半島
2 宗教と国際関係
3 大征服と版図の拡大
4 文明の重心点
第2章……文明的な展開
1 宗教としてのイスラーム
2 文明の定義をめぐって
3 版図に加わった先行文明
4 独自の文明形成
第3章……文明の形—イスラーム的特質
1 乾燥オアシス地帯と遊牧文化(バダーワ)
2 アラビア半島の遊牧文化
3 文明と遊牧文化の差異
4 農耕・都市・遊牧文化の三項連関
5 二つの都市と三項連関
6 聖典のバダーワ的性格
第4章……共同体と国家の形成
1 国家なき部族社会からウンマ原理へ
2 「マディーナ憲章」再考—最近の研究動向から
3 マディーナ憲章が描くウンマと統治権
4 クルアーンにおける「ウンマ」
5 宗教と民族の共存
6 神権政治をめぐって
7 政教一元論
第5章……カリフ制国家の形成と変容
1 後継者の選出
2 カリフ政体(ヒラーファ)の成立
3 長老支配か、門閥政治か
4 共同体=国家の分裂
5 王朝権力の成立
6 原型・理念・可能態としての初期イスラーム時代
第6章……イスラーム化の進展
1 アラブ帝国の支配
2 統治制度の整備
3 イスラーム化の仕組み
4 イスラーム帝国の勃興
5 バグダード建設と国際貿易ネットワーク
6 「白い木綿」の隆盛
第7章……アラビア語の成長と諸科学の形成
1 詩人の時代から聖典時代へ
2 紙の導入
3 翻訳運動
4 アラブ文学の誕生
5 イスラーム科学の成立
第8章……イスラーム法の発展
1 イスラーム法の役割
2 クーファの学統─法学者の誕生
3 学派の興亡
4 ハディースの収集
5 大法官アブー・ユースフ
6 理性主義神学をめぐる闘争
第9章……イスラームの体系化
1 文明形成期の危機
2 分派と党派の先鋭化
3 スンナ派の静かなる革命
4 ウンマの一体性
5 思想の市場メカニズムと科学の自立
終 章……その後のイスラーム文明と国家
1 アッバース朝後期から諸王朝の時代へ
2 イスラーム文明の展開
3 イスラーム文明の退勢と「文明の復興」
[注]
あとがき
イスラーム文明への理解をさらに深めるための文献案内
引用文献一覧
索引(逆頁)